徒然


「漫画に興味がなくなった」と放言してはや数ヶ月は経つと思うが、どういうわけだかこの人はちかごろ漫画をいくつか仕入れてみた。
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ランド2 山下和美
イムリ18 三宅乱丈
夕方までに帰るよ 宮崎夏次系
ホーリータウン 宮崎夏次系
一杯の珈琲から 山川直人

山下和美「ランド2」は「天才柳沢教授の生活」で有名なベテラン女流漫画家・山下和美が現在連載中の作品である。以下続刊。この人は僕は「不思議な少年」シリーズが好きで、お店にも置いてある。「ランド」はそんな山下さんが気合いを入れて始めた新連載で、浦沢直樹がNHKでやってる番組でも、執筆の様子が紹介されていた。気合いは感じるものの、大丈夫かな〜?という気持ちもあり、期待と不安ないまぜで追っかけている。現代日本の不安を描く、ということで、1巻では平安〜江戸時代風の村でストーリーが進むが、だんだんとそれは過去の話ではなく、現代における隔離された特殊環境だということがわかってくる。しかしまだ「隔離過去風世界」と「現代世界」の接点は少なく、おおむね「過去風世界」メインで話が進んでいる。これから何を見せようとしているのかが気になるし、心配でもある。この期待と心配が半々な気持ちは、新井英樹「なぎさにて」を追っかけてるのと同じような気持ちでもある。いま僕から見える世界では、漫画よりもネットや本の方が、あるいは音楽の方が、畑をやったり実際に動いている人の方が、現代社会にタイムリーにメスを入れて新しい世界観を提示する、という作業では先んじているように見える。その二番煎じにはなってほしくない。まだ見たことのない物を見たい。偉そうな事言ってますが期待してるのです。リスク承知の上で現代社会に立ち向かおうとしている姿勢が好きです。そういう漫画家さんは少ない。

三宅乱丈「イムリ18」は、もう18巻になりましたか。いつの間にやら大河ロマンですね。これはいきなり三宅乱丈を知らない人に「イムリ」から読めと言っても難しいでしょうから、「ペット」全5巻を先におすすめします。こちらを読めば三宅さんがどんな方かはわかるはずです。人間の心のドス黒い部分を描きながら、しかししっかり優しさも兼ね備えた人だとわかるので、読後感は悪くないです。僕は好きです。いい人だって悪い事をしたり悪い人になったりするし、悪い人にだって良い心もあるし、という当たり前の事をちゃんとわかってる人だと思います。読んでると辛いときもあるけど、ベースは優しさでできてます。

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そしてまあ、読んでて辛いのが宮崎夏次系さんの作品で、あ、名前の最後に「系」とついてますが個人名です、「みやざきなつじけい」。この人の作品を読むのは本当に辛い。薄暗い薄ぼんやりとした、でもしっかりある暗さを受け取ってしまう。本当に辛い。人によってはそんなに辛くないみたいだけど、どうなんでしょう。僕は辛いです。べつにグロかったりとかしないしPOPなお洒落な絵柄なんですけど、彼の作品はどれも共通して暗さを描いていて、家族が崩壊していたり、崩壊してるのにまともなフリをしたり、友達や知人が自殺していたり、友人がいじめられていたり、自分がいじめられた事があったり、なにか周りに馴染めなかったり、馴染んでいるフリをしたり、そういう体験がある人にはすごく響くはずです。僕はこの人の作品読むと辛いので嫌い?なのですが、ほんとうものすごい才能だなと思います。こんな辛くさせられる事そうそう無いですもの。だから、誰かが彼の事をけなしてたら、「いや、それは、、」と言っちゃうんじゃないかな。自分は「辛い。いやだ。」と言ってるくせに。
しかしながら今回の「ホーリータウン」の方は、すこし「陽」のエネルギーが入って来た気がします。これはうまく説明できないのですけど、彼の作品、いままでの作品は、ストーリー自体は救いがあるものもあるんですけど、なんか全体として受ける印象としては暗いというか、読後感が辛かったものばかりだったんですけど、この「ホーリータウン」はそこまで辛くならなかったな。これはストーリーの陰陽だけではないと思うんですよ。なんか全体として受ける印象というかエネルギーというか・・。「夕方までに帰るよ」の方は読後感辛かったし・・。経験にもよるのかな。
この作家さんは若手のアーティストさんやパフォーマーさんに人気なので、そうした20代前半の方の感想も生で聞いてみたいなと思ってます。なかなかコアな部分に踏み込む事になるかもしれないので、誰しも誰の前でも、、というわけにも行かないかもしれませんが。。

そしてそんな辛い漫画を読んで、はあ、どうしようこの気分、いま週に一回の家族団欒なんだけど・・というとき読んで助かったのが、
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山川直人「一杯の珈琲から」。これはいいですね。あいかわらずいいです。「コーヒーもう一杯」シリーズが好きだったのでこれも買ってみたのですが、期待通り良いです。この言い方はすこしちがう気がしますが・・という感覚も山川直人さん好きな人ならわかると思います。おしつけがましくなくて、ほっとするような、ほんと秋の寒い風が吹く日に街を彷徨ってどこにも居場所がなくてフラっと入った喫茶店、カフェじゃないですよ喫茶店、でほっこりと、奥の隅の席で木で出来た椅子に座って、焦茶色の木製のテーブルに載った温かいコーヒーを飲んで、湯気を少し感じながらホッとする、そういう漫画ですよね。


(火〜土 午後3時オープンになりました)
(owner Ken 店主へそ)

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by toshiokake2 | 2015-12-01 15:22
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